掲載元:note(2019年3月28日)
https://note.mu/maegawa_shinsuke/n/neaee837eeb0c?magazine_key=m0e09afcfe2eb
【vol.012】 「スキーマ」の活用
こんにちは。まえぴょんです。
先日体調を崩した娘からウィルスをもらったのか、一昨日は私が発熱してnoteを更新できませんでした。あーしんどかった。
それにしてもその娘、もうすぐ2歳と4ヵ月になろうとしてるんですが、最近とても生意気になってきたというか、我が強くなってきたと言うか、強情さが増してきたというか、なんせそういう生物になってきました。
そのことを妻に相談すると、
「そりゃ我々の子どもやから仕方ないんちゃう?」
と(笑)
おっしゃる通り!気質はある程度遺伝するだろうからね!
「スキーマ」とは?
さてさて、先日自宅に戻ると、そんな娘の強情なリクエストに応えて妻がイラストを描いていました。それがまた微妙というか絶妙というか。なんとも言い表せないこの妙な絵をまずはご覧ください。
何の絵かわかりますか?顔でしょうね、きっと、何かの顔。
これが何の顔なのか。
考えてみてください。
なんとなくアレちゃうかな〜、と勘付いた人もいらっしゃるかもしれませんんね。
でも確信が持てないこの絵の絶妙さ(笑)
ではヒントを出します。
というか、ほぼ答えかな。
じゃーん。
ここまでくるとわかりますよね!
センターを飾っているこのキャラは、アニメ「アンパンマン」に登場する「カレーパンマン」でしたー!
最初、このカレーパンマンだけを見た時には微妙すぎてそれが何かハッキリとはわからなかったかもしれませんが、カレーパンマン以外のキャラクターたちの登場によって、これらはアンパンマンに出てくるキャラクターなのだ、という周辺情報が整いました。だから、なんとなくカレーパンマンっぽく見えるキャラがカレーパンマンだと判別できるようになったんですね。
このように、理解しようとする対象の周辺情報を揃えることは、物事の理解に一役も二役も買っているのです。
この現象を心理学的に説明すると以下のようになります。
私たちの脳内に既に存在している、ある事柄に関するひとまとまりの知識を、心理学用語で「スキーマ」と呼んでいて、私たちはこの「スキーマ」を無意識のうちに活用して物事の理解を促しているのです。
文章を読む際のスキーマ
続いて、その感覚を文章で体感してみましょう。まずこの文章を読んでみてください。
「思い返せば3歳の時にテレビで見たのがキッカケで始めて、この歳になるまで本当に夢中になって練習してきた。特に、昔から強豪校として有名である今の高校に入ってからは、良き指導者に恵まれ、練習の質が随分と高まったと思う。同級生の里美とはリズムが合いやすく、私たち二人が息ぴったりに躍動した大会では、常に表彰台の一番高い場所に立つようになった。
明日の本番を迎えるにあたって、今日はあえて練習はせず、体と道具のコンディションを整えることにした。里美とのコミュニケーションを取った後は、ストリングを新調した。昔はこの糸は羊の腸から作られていて、gut(ガット)と呼ばれていたが、今ではナイロン製のものも多い。テンションの調整がしやすく、高校生になってからは先生からの指導もあって、自分でストリングを張るようになった。その方が経済的だという理由もあるけど、道具の状態を知ることが自分の力を発揮しやすい気がしている。
さぁ、明日はいよいよ待ち望んだ全国大会だ。テレビ局も来るらしい。今夜は音楽を聴きながらイメージを膨らませてベッドに入ることにしよう。」
この文章を読んで、意味がわかりましたか?なんとなくの雰囲気は伝わったかもしれませんが、結局なんの話やねん!って感じません?
ではこの文章のタイトルが、「バイオリンの全国大会」であれば、いかがでしょうか?ちょっと曖昧だった点と点が繋がってきませんか?このタイトルを知ってから、もう一度読み返してみてください。先ほどよりも理解が深まっていくと思います。
(※バイオリニストの友人がいなかったので確認できなかったんですけど、バイオリニストからするとこのような文章に違和感がありますか?あれば指摘していただけると助かります!)
さて、「バイオリンの全国大会」という単語が出てきたその瞬間から、文章の内容がよくわかるようになったと思いますが、それはなぜでしょうか?
「バイオリンの全国大会」という言葉に含まれている情報だけで文章がわかるようになった、ということではなさそうですよね。
実は、「バイオリン」に関する様々な知識がもともと私たちの脳内にあり、その知識が文章を処理する際に使われたから、文章がわかるようになったのです。
例えば
私たち二人が息ぴったりに躍動した大会
というクダリは、「バイオリンの演奏者はバイオリンを左顎と左肩に挟んで、左手で弦を押さえながら、右手に持ったキューを弦に擦るようにして音を奏でる」という知識を持っているから、ステージでそんな二人の女子高生が息を合わせて演奏する姿を思い浮かべることができたんじゃないでしょうか?
こうして我々が物事を理解するために無意識のうちに活用している周辺情報が、「スキーマ」なのです。
だから今回の「バイオリンの全国大会」のように、初めに何の話かを示してもらえると、脳内にあるどの「スキーマ」を使えば良いかわかるので、それを総動員して文章を処理できるようになり、より理解を深めやすくなります。
さて、続いてこの同じ文章で、タイトルを「テニスの全国大会」という設定で読み返してみてください。不思議とテニスでも違和感ないでしょう?
私たち二人が息ぴったりに躍動した大会
などは、テニスコートでラケットを持った女子高生が息ぴったりのダブルスをしている姿を思い浮かべることができたんじゃないでしょうか?
そうやって思う浮かべることができるのは、我々の脳内にテニスに関する知識があって、その周辺情報(スキーマ)を引き出しながら文章を読めるからに他なりません。
今回の「バイオリンの全国大会」と「テニスの全国大会」のように、発動してくる「スキーマ」を別のものに変えると、同じ文章であったとしても、イメージされるものは全く変わってきます。
このことからも、「何の話かがわからなければ、話がよくわからない」のは、どの「スキーマ」を使っていいかわからない状態にあるからだということが理解できるかと思います。
つまり、文章のタイトルや、筆者の主張など、抽象的な大枠の概念を知ってから文章を読むことは、理解を深めるための合理的なステップなのです。
現代文の評論文は本文の最後から読めーっ!
さて、ここまで「スキーマ」の活用が読解に大きな影響を及ぼすことに触れましたが、では、国語の評論文のテストにそれを活かすなら、どうしたら良いでしょう?
と、問いを出すくらいならタイトルに答えを書くなと言われそうですが(笑)、そう、評論文本文の最後から読めばいいのです。それはなぜか?評論文は必ず最後に筆者の主張が書いてあるからです。
(本文が、ある評論文の一部を切り取られた部分的な文章であればその限りではないかもしれません)
まずはその主張を読んで、なんとなくでもその筆者の主張を踏まえ、それに応じた「スキーマ」を発動させる準備をしたうえで冒頭に戻って読み進めていけば、脳の負担を軽くした状態で理解していくことができます。
これを「受験のテクニック」と揶揄する人がいるかもしれませんが、だって、こうした方が脳の負担が軽く済んで合理的ですから。それに、後述しますが社会に出てからも役に立ちます。こうした心理学で証明されている人間の特徴を活用しない人は、テストでも仕事でも、よい成果を出すことは難しいと思うけどな。
「スキーマ」を日常に活用しようぜ!
さてこれまではインプットにおけるスキーマの活用を説明してきましたが、逆のアウトプットの場合は、自分が考えていることを相手に分かりやすく伝えるためには、受け手に対してできるだけ早い段階で、どの「スキーマ」を使ってほしいのかを伝えることが重要です。
よくビジネスの場においては、「最初に結論を言え」と言われますが、それを心理学的に言い換えると、「俺にどのスキーマを発動して欲しいのか、それを伝えてから言いたいことを言え」という話です。
それは書いて伝える時でも話して伝える時でも同じですが、特に書いて伝える場合においては対面で話すのと違って相手の反応をリアルタイムに見ることができません。そのため、話して伝えるよりも、より緻密な備えを文章の中に入れておくことが望まれます。
つまり、文章の冒頭にどのスキーマを発動したら良いのかがわかる、抽象的な主張を組み込んでおくことが求められるのです。
口頭でも文章でも、そこまで受け手に配慮できると相互理解しやすいんですよねー。その配慮がない会話のキャッチボールが巷には溢れています。そしてその雑なコミュニケーションからトラブルが起こることもあるのです。
一応このnoteは国語力を上げることを前提に書いていますが、このような学び方をすれば日常生活にとても役立ちそうでしょ?日常に役立つってことは、つまり実力がついたってことです。実力がつくから、テストの点数がどうしても上がってしまう。
テストの点数を上げるために勉強するんじゃなくて、日常をラクにするように実力をつければ、結果的にテストの点数も上がるわけです。その順番、大事ですからね!
はい、では今日はここまで〜
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